タンパク質の熱変性

医療の分野でも、トレーニングの分野でもタンパク質の重要性は解かれています。今日はそんなタンパク質のお話し

タンパク質って何?

たんぱく質というのは、アミノ酸が数多くつながったもので、ただ直線的につながっているだけではなく、そのつながりが、からみあって、立体的な構造をもっています。
熱変性というのは、熱によってこの立体構造が壊れてしまうことをさしています。

ホエー

牛乳たんぱく質は、カゼインたんぱく質とホエーたんぱく質に大きく分けられます。カゼインは栄養価の高いたんぱく質で、体内で分解されると各種のペプチドに変わります。
これらのペプチドは、カルシウムの吸収を促進したり、腸の蠕動運動を抑制する作用をもっています。

ホエーたんぱく質は高蛋白・低脂肪で栄養価が高い、またホエーたんぱく質に含まれているラクトフェリンという成分には、エイズウイルスの侵入を防ぐ働きも確認されています。

パスチャリゼーションにおける牛乳の変化

カゼインは、熱による変性を受けにくいたんぱく質と言われていますが、ホエーたんぱく質で80℃前後から変性が始まります。

赤ちゃんがミルクを飲むとお腹の中で固まることは、お母さんは体験的にご存知のことと思います。
この胃の中で固まるということはすごく大事で、固まるときに脂肪やカルシウムを包み込み、この栄養分を体中へ運んでくれます。

牛乳も同様に、牛乳に含まれているたんぱく質の約80%を占めるカゼインが、胃の中に入ると胃酸や、酵素ペプシンによりヨーグルトのように固まります。

そしてゆっくりと消化吸収されます。

チーズはまさにそのしくみを利用してつくられています。

しかし、熱変性したたんぱく質では固まらない為、直接腸に流れてしまうのです。したがって、UHT牛乳ではチーズはできません

※UHT 殺菌:連続式の超高温瞬間殺菌で、牛乳が、120~150℃で数秒間殺菌され、その後急速に冷却される方法。市販の牛乳はほとんどこの方法を用いている。

ミニ豚の胃を使った牛乳の殺菌方法の違いによる胃の中でおこる変化の様子

小寺とき『本物の牛乳は日本人に合う』より抜粋

写真はミニ豚に、1.5リットルの牛乳を飲ませた30分後の胃の様子です。
左側がノンホモ・パス乳、右側がUHT牛乳です。
ノンホモ・パス乳はガムのように大きく固まり、体の要求に応じて、消化液により順番に溶かされ、時間はかかりますが消化液はよく混ざり、固まった栄養物はカゼインによって腸内にコンスタントに提供されます。
しかしUHT牛乳は大きく固まっていません。

それぞれの乳を飲ませたミニ豚の変化

グラフはそのミニ豚の生体の反応です。

  1. はpHの経過時間の変化です、胃の中はpH4~5が理想的といわれています。生乳やパス乳は6時間たっても理想的な状態にあります。
  2. は飲用後、胃の中に残ったたんぱく質の経過時間の変化です。生乳とパス乳は比較的コンスタントに十二指腸に出て行きます。
  3. は飲用後の胃の中のカルシウムの滞留時間です。UHT牛乳ではカルシウムもすばやく通過してしまいます。

白濁試験とレンネット試験

パスチャライズド牛乳とUHT牛乳の違いを簡単に確認できる方法として「白濁試験」と「レンネット試験」があります。白濁試験はたんぱく質の変性、レンネット試験はカルシウム変性を確認する試験です。

4種類の牛乳で実験しました

白濁試験

「白濁試験」は乳を硫酸アンモニウムでろ過し、残った液体を加熱し水溶性たんぱく質の熱変性を見る実験、つまり熱に弱いホエーたんぱく質が生乳中に残っているかを確かめる実験です。

  • ※ホエーたんぱく質の成分のうち、β―ラクトグロブリンは、硫酸アンモニウム(硫安)を加えても凝固しないという性質を利用する実験。

レンネット試験

「レンネット試験」は牛の第四胃から抽出した凝乳酵素剤のレンネットによって、牛乳中の主要なたんぱく質であるカゼインがカルシウムイオンと結びついて固まる性質を利用します。
牛乳中にカルシウムイオンが残っているとレンネットと反応して凝固します。自然な消化吸収をするために、飲んだあと胃の中で固まる牛乳であるかを確認するための実験です。

※レンネットはチーズを固めるのにも利用されています

パスチャライズド牛乳 63℃30分殺菌とパスチャライズド牛乳 75℃15秒 殺菌が生乳とほぼ同様に固まったのに対し、UHT牛乳は固まることなく下のビーカーに流れ落ちました。
このことによって、熱による変性を受けやすい水溶性カルシウムが、UHT牛乳には本来の形で残存していないことがわかります。

ラクトフェリンの話

パスチャライズド牛乳に生存しているホエーたんぱく質。

その中でも注目されている成分がホエーたんぱく質中に含まれる「ラクトフェリン」と言うたんぱく質です。
ラクトフェリンは母乳、哺乳類動物の初乳に特に多く含まれ、生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳に含まれるラクトフェリンや免疫物質などのおかげで細菌に負けない体になると言われています。
また、最近の研究結果では、ラクトフェリンが持ってる各種の免疫活性機能が注目されてきています。

  • がん細胞を攻撃する免疫細胞のNK(ナチュラルキラー)細胞などを元気にする働き。
  • 腸内細菌のバランスを整え、免疫力を上げる働き。
  • 骨を作る骨芽細胞を増やし、骨を溶かす破骨細胞を減らして骨の成長を促す働き。
  • 感染症を予防する働き。
  • 鉄分を溶解し吸収を補う働き。

その他、ビフィズス菌の増殖、抗炎症作用などの健康を維持・増進する作用が知られています。
しかし、 ラクトフェリンも高温で加熱されると、本来の形や活性を失ってしまいます。

このように健康維持にとって大切な要素である自己免疫力を助ける働きをするラクトフェリン、ホエーたんぱく質が変性をおこさず含有されているパスチャライズド牛乳には効果が期待できます。

牛乳と母乳のラクトフェリン含量

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