マグネシウムと心臓病

マグネシウムが多い食品は虚血性心疾患のリスクを低下

約8万5千人を15年間ほど追跡したところ、摂取量が多いと発症リスクが『3~4割』低くなりました。【―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―】

研究の概要

ミネラルは食事から摂取する必要がある栄養素の一種で、その内、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを多く摂取することは、循環器疾患(脳卒中及び虚血性心疾患)の予防に有効であることが、主に欧米の研究から報告されています。

しかし、アジア人における報告はなく、日本人において、食事からのマグネシウム摂取量と循環器疾患発症との関係を明らかにすることを目的に研究が行われました。

虚血性心疾患の発症リスク

発症リスクは、男女とも、食事からのマグネシウム摂取量が増えるほどリスクが低下する傾向がみられました。

方法 

食事からのマグネシウム摂取量は、追跡開始時のアンケートによる食物摂取頻度調査から推計し、マグネシウム摂取量を、少ない群から5等分に分け(Q1低、Q2、Q3、Q4、Q5高)、摂取量が一番少ない群(Q1)の発症率を基準とし、Q2からQ5群における循環器疾患(脳卒中及び虚血性心疾患)発症率を比較検討しました。<結果>約15年の追跡期間中に、4,110人の脳卒中(脳梗塞及び出血性脳卒中)と、1,283人の虚血性心疾患の発症を確認しました。

虚血性心疾患の発症リスクは、男女とも、食事からのマグネシウム摂取量が増えるほどリスクが低下する傾向がみられました。

男性において、虚血性心疾患の発症リスクは、食事からのマグネシウム摂取量が一番少ない群(Q1)と比較して、比較的多い群(Q4)からリスクが低くなり、女性では、中間~多い群(Q3、Q4、Q5)で、リスクが低くなりました。さらに、女性では虚血性心疾患と脳卒中を合わせた、全循環器疾患の発症リスクでも、Q3、Q4、Q5群で、それぞれ20%、16%、19%低い結果となりました。

食事からのマグネシウム摂取量と脳卒中との関係は、脳卒中の病型(脳梗塞、出血性脳卒中)別の解析を含め、認められませんでした。

ミネラルを調整してもマグネシウム摂取の多いグループで虚血性心疾患のリスクが低下しました。

方法

マグネシウムを食事から多く摂取する人では、他のミネラル(ナトリウム、カルシウム、カリウム)の摂取量も多くなっており、今回認められた食事からのマグネシウム摂取量と虚血性心疾患や全循環器疾患発症との関係は、これら他のミネラルの摂取による好ましい影響を受けているかもしれません。

そこで、ナトリウム、カルシウム、カリウムの摂取量を統計学的に調整した分析を実施しました。

結果

男性では結果は大きく変わりませんでした。女性では、摂取量が一番少ない群(Q1)に比べ、摂取量が中間の群(Q3:40~59%)でのみ統計学的有意な差が認められ、虚血性心疾患の発症リスクが39%低いという結果になり、関連が弱まりました。

【発表論文】 雑誌名: Clinical Nutrition タイトル: Dietary magnesium intake and risk of incident coronary heart disease in men: A prospective cohort study 著者: Yoshihiro Kokubo,et.alDOI:

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