今回は、「なぜ医療費が減らないのか、さらにどうして医療費がどんどん増えているのか」についてお話ししたいと思います。
医療費の増加
現在、日本の医療費は年間8000億円以上のペースで増加しています。毎年、医療費は増え続け、今やその総額は莫大なものとなっています。しかし、唯一例外的に医療費が減少している分野があります。それは、歯科治療です。
8020運動の成功
1980年代後半に開始された「8020運動」では、80歳で20本の歯を保つことを目標としました。1987年当時、80歳の人の平均歯数は3本でしたが、虫歯や歯周病の予防教育と定期検診の推進により、歯科治療は大幅に改善されました。その結果、虫歯や歯周病の発生率が3分の1に減少し、歯科医療費も同様に減少しました。歯科医師たちは、収入の減少を伴いながらも、この目標を達成しました。
他の医療費の増加
一方で、他の医療分野では医療費が増加し続けています。特に癌や糖尿病の患者数が大幅に増加しており、癌はこの60年間で3.8倍、糖尿病は50年間で50倍に増加しました。これにより、医療費も比例して増加しています。
予防の欠如
この医療費の増加の主な原因は、予防が行われていないことです。歯科治療においては、予防教育が効果を発揮しましたが、癌や糖尿病に関しては予防のための教育や社会構造が整備されていません。むしろ、病気が増えることで医療機関や製薬業界が利益を得る構造が存在しています。
歴史的背景と構造的問題
戦前の日本では、完全な自由診療が行われていましたが、戦後の国民皆保険制度の導入により、医療費の構造が大きく変わりました。当初は結核や胃腸炎といった感染症や食中毒が主な病気でしたが、これらは抗生物質や冷蔵庫の普及によってほぼ解決されました。しかし、現代では慢性疾患や生活習慣病が主要な医療問題となり、これに対する対策が十分に取られていないため、医療費が増加し続けています。
結論
医療費の増加を抑えるためには、予防医療の推進が不可欠です。歯科治療の成功例から学び、他の医療分野でも予防教育と生活習慣の改善を強化する必要があります。また、医療と産業、官界の癒着を解消し、真に国民の健康を守るための医療制度を構築することが求められます。
以上、今回は医療費の増加についてお話しさせていただきました。
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