1.お酒を飲む時にとっておいた方がよい栄養素は何でしょう?
2.生まれつき、お酒を飲める人と、飲めない人の違いは何でしょう?
3.お酒を頻回に飲むと、あまり飲めなかった人も、そこそこに飲めてしまうのはなぜでしょう?
今回は、それについて解説したいと思います。
アルコールの分解には、「ビタミンB3(ナイアシン)」「ビタミンB1」「亜鉛」が必要です。アルコールを飲むと、尿からのマグネシウム排泄も増えるため、「マグネシウム」も不足します。
さらに、アルコールを飲むと、抗酸化ビタミン「ビタミンC」の需要が上がります。ビタミンCは、有害なアセトアルデヒドの毒性を弱めてくれます(Sprince H , et al. Article on Ascorbic Acid. Int J Vitam Nutr Res 1977;(Suppl 16):185.)。
アルコールをスムースに代謝させるためには、これらの栄養素をきちんととっておくことが大切です。
アルコールは、胃で20%、小腸で80%吸収されます。そして、血管を介して肝臓に集められて、肝臓の酵素によって分解されます。
アルコールの分解には、3つの経路があります。
①アルコール脱水素酵素(ADH)経路
②ミクロソームエタノール酵素群(MEOS)経路
③カタラーゼ経路
①アルコール脱水素酵素(ADH)経路
ADH活性の個人差は少ないです。慢性飲酒でも、ADHの活性は亢進しません。
ADHは、ビタミンB3(ナイアシン)依存性酵素で、亜鉛を含んでいます。
②ミクロソームエタノール酵素群(MEOS)経路
こちらは、主にシトクロームP450酵素が代謝します。
お酒をのんで酔いが進んで、爽快期を超えて、ほろ酔い期(血中濃度0.05%)から活性化してアルコールを分解してくれます。
ほろ酔い期からは、アルコールは、ADH経路とMEOS経路でアルコールを50%ずつ分解することになります。
ミクロソームエタノール酵素群(MEOS)は、ビタミンB1が大量に必要です。
そのため、「今日は飲もう!」と思っている日は、ビタミンB3や亜鉛に加えて、ビタミンB1をきちんととっておきましょう。
また、MEOSであるシトクロームP450酵素は、鉄を活性中心にもつ酵素です。鉄欠乏がひどい人は活性が低下する可能性があります。
鉄欠乏女子(テケジョ)は、ご注意。
頻回に飲酒をしていると、MEOSが活性化して、増えてくるので、アルコールの分解能力が上がり、お酒が飲めるようになってきます。
これが、アルコール耐性の理由です。
あんまり飲めない人も、飲める量が増えてくるのは、MEOS経路のおかげです。
しかし、本来飲めない人が、MEOS経路を酷使して、お酒をたくさん飲んでいると、肝臓の負担が非常に大きくなってきます。
MEOSはお酒をたくさん飲むようになれば、誰でも、活性化させることができます。
MEOSの主要な酵素であるチトクロームP450(2E1)の活性を10倍に以上にすることもできるかもしれませんが、アルコールの分解速度は、せいぜい1.5~2倍になるくらいです。その分、飲める人よりも肝臓に負担をかけることになるので、飲みすぎないようにしましょう。
③カタラーゼ経路
アルコールからアセトアルデヒドに分解する3つ目の経路として、「カタラーゼ」による代謝がありますが、こちらは極めて弱いです(5%以下)。
カタラーゼの活性中心も、「鉄」です。そのため、鉄欠乏がひどい人は、カタラーゼの活性が低下する可能性があります。
これらの3つの経路で、アルコールからアセトアルデヒドに分解されますが、アセトアルデヒドは毒性が高く、皮膚の赤みや、頭痛・吐き気など二日酔いの症状を引き起こします。
そのため、肝臓では、
④「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」によって、無害の酢酸にします。
酢酸は、肝臓から血液を通して全身に送られ、筋肉や脂肪組織で二酸化炭素と水に分解され、呼気や尿となって体外へ排出されます。
このALDH活性には、遺伝による個人差あるため、「お酒に強い人」と「お酒に弱い人」がいます。
ALDHの活性が低い遺伝子【飲めない遺伝子】を持っている人は、アセトアルデヒドが体に残ってしまい、頭痛など気分が悪くなるので、お酒を飲むのが苦手になります。
逆に、ALDHの活性が高い遺伝子【飲める遺伝子】を持っている人は、有毒なアセトアルデヒドを速やかに分解できるために、気持ち悪くならず、お酒を飲むことができます。
まとめ
アルコールの分解のしくみを理解して、飲む前に、ビタミンB群・ビタミンC、亜鉛やマグネシウムなどはきちんと補っておきましょう。
また、鉄欠乏女子(テケジョ)は、日ごろから肉や魚など鉄が豊富なタンパク質をきちんと補っておきましょう。
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