あるアンケートによると、周りの人で一番嫌われる臭い原因の第一位は体臭(67.1%)、二位;口臭(60.2%)でダントツ、以下フケ(42.3%)、清潔感の無い髪(39.8%)、清潔感の無い服装(36.6%)…などである。
そもそも、なぜ人間は自分の臭いに気が付かないかのか?
それは、その人の臭いは体験や記憶に左右されるからだのだ。先ず、臭覚は脳から直接でる神経(視神経や聴神経、三叉神経といった五感の神経や迷走神経など生きるために必要な情報をったえる12の脳神経)の中で、最も原始的かつ一番脳から近いところから出ている第一脳神経の嗅神経です。
鼻の粘膜には
①臭毛と呼ばれる嗅細胞のいわば枝葉で臭いの分子をキャッチする
②嗅上皮に溶け込み③嗅細胞でこれを電気信号に変換する。
この電気信号は嗅神経を通じて大脳辺縁系というところに伝えられ、臭いの感覚が起こります。ヒトは約400種類の嗅覚受容体を持つといわれ、その組み合わせは無限にあり、そのため数十万種類あるといわれるにおい物質を嗅ぎ分けることができる、といわれています。
ところで、例えば納豆や鮒ずしを食べて『不味い!!』と思った人の脳には、この味は不快であり、自分にとっては不要であるものから『危険』という感情が残ります。
つまり、『不味い=不快=!臭い!=危険!』と判断されます。野生動物であれば、敵動物の臭い、即ちシマウマであればライオンの臭いは『危険!』と認識されます。
つまり、毎日嗅いでいる自分の臭いは『危険!』と思わない為に『不快!』とは思わないのです。
この臭いが電気信号に代わった瞬間は快も不快もありません。
たんなる電気信号です。
これが大脳辺縁系という魚類や爬虫類で発達している古い脳の機関に伝わります。
次回は古い脳の視点から考えていきましょう。
大脳辺縁系は『怒り・恐れ・喜び・悲しみ』など、生物が生き延びるために必要な食欲性欲睡眠欲排泄欲など掌り、また死や痛みや恐怖からは逃走するという本能や、相手を捕食して殺して食べるというような殺戮という感情を担います。 ほ乳類では大脳新皮質というものがこの外側にあり『愛・慈しみ・仲間意識・育み・理性』などがありますが、臭覚はこことは関係ないのです。
もっと原始的な固体や種の保存本能として認識されます。
そして、大脳辺縁系には先ほど示したような『怒り・恐れ・喜び・悲しみ』などいう原始的な情動を掌る『偏桃体』という部位があります。
偏桃体では、伝わってきた電気信号と情動とを関連付けて記憶させます。
つまり『怒り、恐れ、悲しみ』などは不快なので、これらの感情がある臭いは『臭い!』と認識され、『喜び』などは『いい臭い』と認識されます。
赤ちゃんは自分の便を最初は臭いと認識していません。
親が便を嫌がるのを見て自分も不快だと認識し、次第に便=不快と認識するようになるのです。
だから、犬の赤ちゃんなどが自分の便を食べたりすることがあるのです。
さて、自分の臭いが分からなくなる理由を最初に簡単に言いましたが、実は臭いそのものは、一度神経が興奮すると次の刺激を受け入れられなくなる、という性質があります。これを純化、と言います。
つまり、臭いと一度認識してしまっても、常にその匂いを嗅いでいると『危険な臭い』と認識しなくなるのです。
さて、口臭の原因ですが、胃腸などの消化器疾患や歯周病などの口腔内環境の悪化です。 ともに、唾液がしっかり出ていれば防げるものです。
健康な人は一々1.5~2リットルも唾液がでています。
ところが、咀嚼回数がすくないとだ液量は極端に減少します。
縄文時代では、1日に二万回以上咀嚼をしていましたが、戦後では1日5000回くらい、現代では酷い人になると300回くらいしか咀嚼しません。
唾液とは単なる液体ではないのです。アミラーゼという炭水化物を消化する酵素やIgA(免疫グロブリンA)という、善玉菌を認識して小腸などに定着させる免疫物質が含まれています。
つまり、咀嚼をしなければ、食物は分解されずに胃腸に負担をかけて消化器疾患になり、しかも善玉菌をいくら摂ってもIgAで認識しませんからヤク〇トなどをゴクゴク飲んでも腸には決して定着しないのです。
牛やラクダなどが反芻して胃から口に戻して咀嚼をしているのは、このIgAを食物に混ぜて善玉菌を増やすためなのです。
また、スマホをしすぎても口臭になりやすいのです。
スマホをすると交感神経が優位になり(つまり興奮状態になり)、だ液量が減少します。また、頭がさがるので唾液線を圧迫して物理的にも唾液が出にくくなります。
忙しいからハミガキをせずに家を出て、コンビニでかったゼリーなどの流込み飲料で噛まずに食事をすませ、スマホをみながら出勤する。キチンと咀嚼していない流込み飲料は本来は不快と認識するのに、これを続けている内に不快と認識しなくなるどころか、自分の口臭に『純化』して臭いがわからなくなる…。 こんなことは無いでしょうか?
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