アルコール代謝と稲作文化
送別会、歓迎会のシーズンが近づいて参りました。
お酒に強くない人は、あまり喜ばしくない機会かもしれませんね、
さて、アルコールで赤くなる人は、アルコール代謝産物であるアセトアルデヒドを分解するALDH2という酵素が遺伝的に弱いからです。
このようにALDH2遺伝子が欠損している日本人は約44%にも上ります。
そもそも、東アジアではこの遺伝子を欠損している人が多いです。(Ann Hum Genet. 2009 May)
この遺伝子欠損をもった地域は、実は稲作文化と一致しているといわれています。
元来、稲作を行っていた水田地域には、糞便肥料や水を好む、原虫やアメーバ赤痢による感染症が歴史的に多いです。
当時の時代背景から、感染症に対する特効薬や十分な栄養はありません。
よって、進化の過程で、人がこの猛毒のアルデヒドを分解せずに身体に維持することによって、病原体の侵入・感染を防いでいたと考えられます。
なぜなら、アルデヒドの分解はミトコンドリアで行われますが、このような病原体は体内にミトコンドリアを持たないため、アルデヒドを解毒する酵素を持っておらず耐性がありません。
つまり、稲作文化をもった東アジア人は、アルデヒドを分解するALDH2遺伝子を欠損させることによって、毒物のアルデヒドを貯まりやすい体に進化させ、感染症から守っていたのではないかということです。
実際に、原虫やアメーバ赤痢の治療薬にはアルデヒドが含まれていたり、アルデヒド代謝を抑制する成分が含まれているようで、これを飲んだ人はお酒が強くてもその後弱くなったという報告があるそうです。
ということで、ALDH2の欠損は、お酒を飲めない嗜好や楽しみが減りますが、その背景には、実はこうした文化人類学と進化が絡んでいたのです。
アルコールへの耐性は、ある程度は後天的にも獲得することができます。
お酒が好きなのに、あまり飲めなくて残念だ…という人も耐性を持つことが可能です。
しかし、昔ほど飲酒が強制される機会もなくなりましたから
お酒が飲めない方の方が、アルコールによる弊害を受けにくくて健康的だとも考えられますね。
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